1週間に2回は更新しよう!と心に決めて新しいサイトに移行したのですが、すでにその決心は崩れ、なんと3月は2つしか原稿を書いてない…。こんな体たらくで、日本の埋もれかけたよき伝統が記録できるのか甚だ心もとないですが、とにかくがんばらねば!遊んでばかりはいられない!
というわけで、4月になりました。日本の旧暦では卯月(うづき)と呼ばれます。今年は卯年なので、癸卯年の卯月になります。
なぜ4月が卯月なのか
なぜ暦上の4番目の月を卯月と呼ぶのでしょう。卯の花(ウツギ)が咲く頃だから、という説もあるようですが、これは逆の説(ウツギの花が咲くのが卯月なので卯の花と呼ばれる)もあるので、違うという研究者もいます。一番納得できるのが、最初を意味する「初」「産」の音「ウ」が、「卯」と変わったというもの。卯=ウサギは多産で、子授け・安産などの縁起物としても知られていますね。つまり、4月(卯月)というのは1年の始まりを意味する言葉でもあったようです。
日本の年度始まりは卯月
考えてみれば、日本の社会は世界の潮流の中で頑固なまでに4月スタートを続けている数少ない国でもあります。4月が始まりの理由は、稲作に原形があるのでしょう。令和5年の旧暦の卯月朔日(4月1日)は、2023年5月20日にあたります。全国的に田植えが行われている季節になりますね。
ところで、世界中で使われている暦(グレゴリオ暦)の月の名前は神さま由来だということをご存じですか?
太陽暦の始まりは古代ローマ
暦の始まりは、古代ローマです。ローマ建国の神話に登場するロムルス王の時代に初めて登場した暦は、10か月のものでした。穀物を植え、収穫する間だけの暦です。あとの2か月分は休息期だったので暦など必要がないという考え方だったのでしょう。
この時、始まりの月(1の月)は「Martius(マルティウス)」と名付けられました。これは軍神・マルス(マーズ)の語源となりましたが、ロムルス王の父という伝説もあります。農耕が始まる月であり、軍隊を動かせる季節の始まりという意味ですね。現在の3月(英語のMarch)にあたります。
2の月は、「Aprilis(アプリリス)」(ラテン語「Aperio=(花)開く」へと続く)、3の月は「Maius(マイウス)」(豊穣の女神・マイアの語源)、4の月は「Junius(ユニウス)」(女性の結婚生活を守護する女神・ユーノー)と続きます。
6月に結婚したい女性が多い理由はここにあります。
5の月以降はテキトー
5の月以降は、Quintilis(クインティリス/5番目)、Sextilis(セクスティリス/6番目)、September(セプテンベル/7番目)、October(オクトーベル/8番目)、November(ノウェンベル/9番目)、December(デケンベル/10番目)という意味の月名になりました。
そのあと2か月はなにもなし。ですが、やっぱり不便だということで、2代目王の時代に60日の休息期にも月名が以下のように設定されました。
11の月は「Januarius(ヤヌアリウス)」(門の神・ヤヌスの語源)、12の月は「Februarius(フェブルアリウス)」(「februa=清めの儀式」のある月)と。
ヤヌスの神が1月に
お気づきと思いますが、農耕に即した暦の1年の始まりは3月でした。これが、紀元前2世紀の軍隊の派遣がきっかけとなって、11の月が暦の始まりと改訂、「Januarius」が1月となったのです。その後、5番目のQuintilisは、その後の王・ユリウス・カエサルが自分の名を付け「Julius(ユリウス)」に、6番目のSextilisは、皇帝アウグストゥスが「Augustus(アウグストゥス)」に変更したことで、現在の暦の月の名が固まりました。強力なローマの王さまがあと何人が続いていたら、7〜10番目の名前も変わっていたかもしれませんね。それにしても、神さまと同列に並ぼうとするなんて、日本だったら罰当たりなお話です。
ということで、4月の英語「April」は、まさに日本語の「卯月」と同じ語源からきているというのは、なんだか不思議な気がしますね。卯月と名づけたのは、もしかしたら古代ローマ人だったのかも(ないない…)。
ちなみに、大豆の搾りかす(豆腐の残存物)を「卯の花」と呼ぶのは、ウツギの花に似ているからだそうです。安価な割に栄養価たっぷりの健康食材ですが、「卯」という漢字は何となく、幸運を引き寄せる力があるように思えます。